根管治療とは
根管治療とは、虫歯が神経まで進行した際に神経を除去して、神経が入っていた根管と呼ばれる管の内部を清掃し、さらに消毒する治療です。
消毒後は薬剤を詰め、これによって歯の維持をはかります。
治療そのものの難易度は高く、根管治療においては消毒した根管内への細菌感染を防がなければなりません。
しかし口腔内は元々多くの細菌が存在するため、例え丁寧に治療しても細菌が入り込むことがあるのです。
そうなると虫歯が再発してしまうため、根管治療を成功させるには医師の技術の高さはもちろん、医療器具や医療機器にもこだわる必要があります。
そこで当院では、根管治療を安全かつ確実に成功させるために4つのことを行っています。
1. マイクロスコープの設置
根管治療は、根管内の虫歯菌におかされた神経や血管を除去するという繊細で複雑な治療です。
根管治療が不充分になることで細菌が残る、もしくは入り込む事態となって虫歯が再発してしまいます。
それを防ぐために必要なのは治療の精密さであり、そのために効果的なのがマイクロスコープです。
マイクロスコープが効果的な理由
いくら腕の良い医師でも根管内を肉眼で確認するのには限界があり、根管の奥の方になるとしっかり見えないことがあります。
その点マイクロスコープなら約20倍の倍率で見ることができるため、根管の奥までしっかり確認できるのです。
これによって根管治療の精度が高まるのはもちろん、正確なだけでなく早い処置が可能となります。
2. ラバーダムの使用
ラバーダムとは、薄くてやわらかいゴムシートです。
ラバーダムを使用する目的は無菌の状態で根管治療を行うためで、マイクロスコープとあわせて使用することで治療の精密さもより高くなります。
ラバーダムが効果的な理由
ラバーダムを使用することで歯だけが露出した状態になり、頬や舌や唾液をさえぎることができます。
頬や舌をさえぎることで視野が狭くなるのを防ぎ、さらにマイクロスコープを使用することで治療がより精密なものになります。
また唾液を遮断することができるため、根管内への細菌の混入も防げます。
ラバーダム防湿
当院ではラバーダム防湿を行っており、これが根管治療において大変重要なポイントになります。
これは根管治療に限ったことではないですが、歯科治療というのは治療において「接着」が必要です。
例えば詰め物や被せ物、これらもセメントによって歯に接着させているのです。
そしてこの接着ですが、実は唾液や湿気によって接着力がダウンしてしまいます。
逆に言えば、唾液や湿気を防止することで接着力が強くなるわけです。
その点ラバーダム防湿を行えば、こうした唾液や湿気を防げるため治療で必要な接着力が強くなるのです。
3. ニッケルチタンファイルの使用
当院では根管治療に使用する医療器具としてニッケルチタン製のファイルを使用しています。
ニッケルチタンとは形状記憶合金で、他のファイルに比べて弾力性に優れています。
これによって様々な状態の根管に対応でき、難症例でも正確に治療することが可能です。
ニッケルチタンファイルが効果的な理由
従来の根管治療ではステンレスファイルを使用していましたが、ステンレスファイルは柔軟性に欠けており、そのせいで直線的な根管形成しかできませんでした。
このため根管が細かく湾曲した状態になっていると、ステンレスファイルでは通すことができなかったのです。
そうなると除去しなければならない神経が残ってしまい、細菌感染が起こってしまいます。
根管の形状は患者さまによって異なるため、こうしたケースでは根管治療は非常に難しかったのです。
その点、ニッケルチタンファイルは湾曲に沿って治療ができますし、さらに根尖部の治療を行うことも可能です。
4. レジンで隔壁を作って治療
当院ではレジンで隔壁を作ってから根管治療を行います。
これは根管治療の精度を高めるための手段で、ラバーダム防湿の効果をより高めることができます。
レジンによる隔壁が効果的な理由
そもそも根管治療とは虫歯がある程度進行した際に行うためのものですから、状態によっては歯が少なくなっています。この場合、ラバーダムを安定してかけることができなくなります。
その対処となるのが、レジンによる隔壁の作成です。
残っている歯にレジンを盛りたすことで、ラバーダムをかけられるようにするのです。
これらはそれぞれ1つの方法だけを行っても充分な効果は得られません。
ラバーダム防湿のためにレジンで隔壁を作り、どんな根管の形状でも対処できるようにニッケルチタンファイルを使用します。
そして、それぞれの精密さを高めるためにマイクロスコープを使用するのです。
つまり当院で行っている4つのことは、4つ全て行ってこそ根管治療において高い効果を発揮するのです。
根管治療の流れ
根管治療では、まず麻酔を行い痛みを抑えた後、歯に穴を開けて血管や神経が含まれる歯髄を露出させます。この際、虫歯の部分も丁寧に削り取ります。
加えて、治療中に他の部位が汚染されないように、隔壁(治療部位を分離する装置)を設置し、ラバーダム(ゴムシート)を使用して唾液などの侵入を防ぎます。その後、リーマーやファイルなどの細い器具を使って、細菌感染を起こしている歯髄を除去します。
お薬を使用し、根管の内側をきれいに消毒・洗浄します。
その後、根管内にお薬が入った状態で、仮の蓋をして1週間程度時間を置きます。
1週間ごとにお薬を新しいものに変えて、根管の内側をきちんと洗浄・消毒します。この間に複数回の通院が必要ですが、途中で治療を止めたり、通院間隔が開き過ぎたりすると、減少していた細菌が再び繁殖し、また治療をはじめから行わなければならなくなります。
根管の内側が十分にきれいになったことをチェックし、最後に身体に無害な歯科治療専用のシーリング剤を根管の中に入れることで、細菌感染の再発を防止します。
最後に根管に芯を立て、土台を作って被せ物を入れます。